ピアノの先生のお話

一般投稿

もし、自分が数年後死ぬとわかってしまったら、普段何気なく過ごしている毎日を、少し立ち止まり、このままでいいのかふと考えるのではないでしょうか。

私達は、どうしても自分の生命については、永遠にあると思いがちです。もちろんご病気で余命を宣告されてしまった方等、日ごろから「死」を意識せざるを得ない方もいらっしゃるかもしれません。

しかしながら私達は、神様だけが知っている、「死」が来るその時まで、生命を頂いているのです。

もしもうすぐ死期が迫っているとしたら、人はどうなるか。

私は愛そのものの存在に戻れるのではないか、と思っています。

死神様は、黒い服を着て骸骨の様な顔をして大きな斧を持った恐ろしい姿でなく、最後の息を引き取るその時までそばにいて、その人を愛の存在に戻してくれる存在なのではないかと私は思っています。

私は昔、小学生から中学生くらいまでピアノを習いに奈良県から大阪まで通っていた事がありました。そのピアノの先生は、母の音楽大学生時代の教師の方でしたので、私が習わせて頂いた時にはもうおばあさんになられていました。

時には厳しく、時には褒めてくださり、褒めてくれるととても嬉しくて、私は出来る限り褒めてもらおうと練習にも励んでおりました。

しかし、次第に私は自分の親指が異常に短く、一オクターブが辛うじてでないと届かない現状に、ピアノの道に進む事を限界を感じ、辞めてしまいました。ピアノは手の指が長い人の方が難しい曲を弾くのにも有利なのです。

辞めてしばらく経ち私が二十代になった頃、そのピアノの先生が老人ホームに入られる事になったと母に聞きました。

先生に会いに行った時、始めはとても元気はつらつな、いつもの先生だったのですが、何度か回数を重ねる度、体調を崩され段々と歩けなくなり、寝たきりになっている現状を目の当たりにする事になります。

お花を持って行くと、「まあ、綺麗なお花ね」「先生はもう外にある春の桜も、夏のひまわりも自分の足で見に行く事が出来ないの」「でも、あなたが来てくれて本当に嬉しいわ」「本当にあなたは綺麗なお顔ね」「あなたに、嬉しい事、幸せな事が沢山沢山訪れます様に」と言って、ベッドの上から手を伸ばして抱きしめて背中を何度も何度もさすってくれるのです。

私は会いに行く度、先生の深い愛に触れ、ぽろぽろ涙が止まらなくなっていました。

老人ホームに入られ、始めはとても元気で沢山お喋りしてくれていた先生。段々と体が小さくなり、段々と体が動かなくなり、ベッドで寝たきりになってしまった先生。でも、先生の頭はずっとはっきりされていました。

先生の愛は、まるで本当に神様そのものの様に、深く深く私の魂に響いていました。私はお見舞いに行っているのに、先生の深い愛を貰いに行くような状態になっていました。

マザーテレサが、もう死にそうになっていて体も動かせない人の体を洗ってあげ、死ぬその時まで尽くされている時、「私はこの方の中の、イエス・キリストに仕えているのです。」と仰っていましたが、その言葉の意味を理解出来た様な気がしました。先生の中に、神様の光が見え、それに触れている様な感覚に陥ったのです。

日本の仏教では、亡くなった人の事を、「ほとけさま」と言います。

色んな宗教観や価値観によって亡くなった方の言い方や考え方は違うかもしれません。でも私は、人間の本質を表している言葉だなと思います。

先生は、亡くなられる少し前、不思議な事を仰っていました。「夢の中で仏様が私の前に現れてね、我が名を呼べ!と言うの」「私は信仰深くなかったけど、阿弥陀如来様だったと思うわ」「なので名前を何度も呼んだの」

私はとても不思議な話だなと思って聞いていましたが、本当に阿弥陀如来様が、先生をお迎えする前に、現れてくださったんだなと思いました。すんなりとその話は夢ではなく、本当に来てくださったのだと感じました。

そのお話をしてくださった後、何か月か後に、先生は静かに息を引き取られました。

私には秀でたピアノの才能はなかったけれども、先生との出会いや、ピアノを少しだけでも弾ける様になれた事、出会いや出来事は決して無駄ではなく、全て意味があり、人生を彩る出来事だったのだなと思います。

そのピアノの先生に通わせてくれた母にも感謝しています。

―先生、お空の上で、阿弥陀如来様と共に元気にされているでしょうか。またお会いしたいです。私は結婚し、子供も生まれましたよ。ずっとお空の上から、見守っていてくださいね。―

今でも先生の笑顔が頭に浮かびます。全ての出会いに、感謝しています。

コメント

  1. wwd.com より:

    Pretty great post. I simply stumbled upon your weblog and wanted to mention that I’ve really loved surfing around your blog posts.
    In any case I will be subscribing to your rss feed and I’m hoping you write again very soon!

  2. This design is incredible! You obviously know how to keep a reader amused. Between your wit and your videos, I was almost moved to start my own blog (well, almost…HaHa!) Excellent job. I really loved what you had to say, and more than that, how you presented it. Too cool!

    • rose22 より:

      Sorry for being late!
      thank you so much.I am very happy.

      Where are you from?
      I was very happy with your comment, but at the same time I was surprised because I wrote it in Japanese.

  3. John E. Snyder より:

    each time i used to read smaller posts that as well clear their motive, and that
    is also happening with this paragraph which I am reading
    at this place.

    Feel free to surf to my web blog – John E. Snyder

タイトルとURLをコピーしました